法人が事業拡大や投資目的で不動産を購入する際、ローン(融資)の活用が一般的です。
しかし、個人が利用する「住宅ローン」は、法人名義では原則として利用できません。
なぜなら、住宅ローンは個人が住むための家を対象とした商品だからです。
法人が不動産購入で資金調達をする場合は「事業用ローン」の扱いとなり、住宅ローンとは審査の視点や手続きが異なります。
この記事では、法人が不動産購入でローンを利用する際の基本から、具体的なローンの種類、審査通過のポイント、メリット・デメリットまでを分かりやすく解説します。
目次
法人名義で住宅ローンは利用できない!その理由とは
法人が不動産を購入する際、「住宅ローンは使えないのか? 」という疑問を持つ方は少なくありません。
結論として、法人名義での不動産購入に住宅ローンは原則として利用できません。
購入物件が居住用のマンションであっても、名義が法人であれば対象外です。
これには、商品の目的や性質の根本的な違いが関係しています。
法人名義で住宅ローンを利用できない理由は、主に以下の2点です。
- 住宅ローンは「個人が居住する家」を対象とした商品だから
- 法人での不動産購入は「事業用ローン」の領域だから
理由①:住宅ローンは「個人が居住する家」を対象とした商品だから
住宅ローンは、申込者である個人が「自分で住む」ための住宅取得を支援する商品です。
そのため、融資対象は個人の居住用物件に限定され、資金使途も住宅の購入やリフォーム費用などに限られます。
法人は「居住」という概念を持たないため、この基本的な条件を満たすことができません。
金融機関は、個人の安定した生活を支える目的で、比較的低い金利で長期の返済が可能な住宅ローンを提供しているのです。
理由②:法人での不動産購入は「事業用ローン」の領域だから
法人が不動産を購入する目的は、事務所や店舗としての利用、社宅、賃貸経営など、すべてが「事業活動の一環」です。
事業目的の資金調達は、個人の居住目的とはリスクの性質が異なります。
事業には収益の変動や倒産といったリスクが伴うため、金融機関はより慎重な審査を行います。
そのため、法人による不動産購入は「事業用ローン」や「不動産担保ローン」といった、事業性資金を扱う融資商品の領域になります。
関連記事:不動産担保ローンと住宅ローンの違いとは?併用できるケースや融資事例を紹介
法人が不動産購入で利用できる事業用ローンの種類
法人名義で住宅ローンが使えない場合、以下のような選択肢があります。
- 銀行のプロパーローン
- 信用金庫・信用組合の融資
- ノンバンクの不動産担保ローン
ローンの種類①:銀行のプロパーローン
プロパーローンとは、信用保証協会などを介さず、金融機関が直接リスクを負って融資を行うローンです。
銀行が直接リスクを負うため審査は厳しいですが、通過できれば保証料が不要で、融資額や金利などの条件を柔軟に交渉しやすいというメリットがあります。
良好な財務状況や豊富な実績を持つ企業向けの選択肢と言えるでしょう。
関連記事:法人向け銀行融資の種類|審査に通るポイントや条件、流れも解説
ローンの種類②:信用金庫・信用組合の融資
信用金庫や信用組合は、地域の中小企業を支える協同組織の金融機関です。
営業エリアが限定される分、その地域の企業を親身にサポートする姿勢が特徴です。
銀行とは異なり、企業の規模や実績だけでなく、経営者の人柄や事業への熱意なども含めて総合的に判断してくれる傾向があります。
設立して間もない法人でも、相談しやすい金融機関です。
ローンの種類③:ノンバンクの不動産担保ローン
ノンバンクは、融資を専門に行う金融機関です。
ノンバンクの不動産担保ローンは、会社の決算内容以上に、購入する不動産の「担保価値」を重視して審査する点に最大の特徴があります。
そのため、赤字決算や設立から日が浅いといった理由で銀行融資が難しい法人でも、融資を受けられる可能性があります。
また、審査スピードが速く、急な資金需要にも対応しやすいのが魅力です。
関連記事:ノンバンクの不動産担保ローンのメリットは?銀行融資との違いを解説
事業用ローンの審査を通過するために押さえるべき3つのポイント
事業用ローンを利用するには、金融機関の審査を通過する必要があります。
個人の住宅ローン審査とは異なる、法人ならではのチェックポイントは以下の通りです。
- 購入予定不動産の「担保評価額」
- 法人の「財務状況」と「事業の将来性」
- 経営者個人の「信用情報」
ポイント①:購入予定不動産の「担保評価額」
事業用ローン、特に不動産担保ローンでは、購入予定の不動産が持つ担保としての価値が非常に重要です。
金融機関は、万が一返済が滞った場合に、その不動産を売却して資金を回収できるかを見ています。
この担保評価額が高いほど、金融機関のリスクが減るため融資を受けやすくなります。
物件の収益性や立地条件、資産価値などが総合的に評価されます。
ポイント②:法人の「財務状況」と「事業の将来性」
法人の「返済能力」を示す客観的なデータとして、決算書や事業計画書が厳しくチェックされます。
決算書の内容はどのように見られるか
金融機関は、過去数期分(通常2~3期分)の決算書から、企業の収益性や安全性を確認します。
安定して利益を出し、財務基盤がしっかりしているかが評価されます。
たとえ赤字でも、その理由が明確で今後の改善計画に説得力があれば、一概に不利になるとは限りません。
説得力のある事業計画の重要性
事業計画書は、会社の未来を示す重要な書類です。 不動産購入が事業にどのようなプラスの効果をもたらすのか、具体的なデータを用いて説明する必要があります。
購入目的や市場分析、収支計画などを盛り込み、実現可能性の高い計画を提示することが融資実行の鍵となります。
ポイント③:経営者個人の「信用情報」
法人のローン審査であっても、経営者個人の信用情報は必ず確認されます。
特に中小企業では、法人と経営者は一体として見られることがほとんどです。
経営者個人が過去に返済遅延などの金融事故を起こしていると、法人の審査にも悪影響を及ぼす可能性があります。
また、経営者が法人の連帯保証人になることを求められるのが一般的です。
関連記事:不動産担保ローンの審査に通らないのはなぜ?通過するコツや落ちたときの対処法も紹介
法人がローンで不動産を購入する4つのメリット
法人がローンを活用して不動産を取得する代表的なメリットは、以下の4つです。
- 経費計上による高い節税効果が期待できる
- 高額物件の購入や大規模な事業展開が可能になる
- 個人の資産を守りつつ事業用資産を形成できる
- 団体信用生命保険への加入が必須ではない場合も
メリット①:経費計上による高い節税効果が期待できる
法人がローンで不動産を購入すると、様々な費用を経費として計上でき、法人税の負担を軽減できます。
減価償却費や支払利息などを経費算入できる
建物の価値の減少分を費用として計上する「減価償却費」や、ローンの「支払利息」は経費にできます。
不動産取得税などの諸費用も同様です。
これらは帳簿上の費用を増やして利益を圧縮するため、節税につながります。
役員社宅制度を活用すれば社会保険料の負担軽減も
購入した物件を役員の社宅として活用する「役員社宅制度」も有効です。
役員報酬を直接下げる代わりに社宅を提供することで、法人と個人の双方にとって社会保険料の負担を軽減できるというメリットが生まれます。
メリット②:高額物件の購入や大規模な事業展開が可能になる
自己資金だけでは手が届かない高額なオフィスビルなども、ローンを活用することで購入のチャンスが生まれます。
少ない自己資金を元手に大きな投資を行う「レバレッジ効果」により、事業展開のスピードを加速させ、企業の成長を後押しします。
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メリット③:個人の資産を守りつつ事業用資産を形成できる
法人名義で不動産を購入すれば、その不動産は「会社の資産」です。
これにより、経営者個人の資産と会社の資産を明確に分離できます。
万が一事業がうまくいかなくなった場合でも、原則として個人の資産は守られます。(※経営者が連帯保証人になっている場合を除く)
メリット④:団体信用生命保険への加入が必須ではない場合もある
個人が住宅ローンを組む際、団体信用生命保険(団信)への加入がほぼ必須です。
一方、法人の事業用ローンでは団信への加入が任意であるケースが多く、必須ではありません。
そのため、経営者の健康状態に不安がある場合でも、ローンを利用できる可能性があります。
関連記事:法人の資金調達に不動産担保融資(ローン)がおすすめの理由
法人がローンで不動産を購入する4つのデメリット
法人がローンを活用して不動産を取得するにあたって、以下のようなデメリットが存在します。
- 住宅ローン控除は適用されない
- 法人特有の税金やランニングコストがかかる
- 売却益は個人の譲渡所得ではなく法人税の対象になる
- 審査の準備に手間と時間がかかる可能性がある
デメリット①:住宅ローン控除は適用されない
個人がマイホームを購入した際に適用される「住宅ローン控除」は、大きな節税メリットです。
しかし、この制度はあくまで個人の居住用住宅を対象としているため、法人名義での不動産購入では一切適用されません。
デメリット②:法人特有の税金やランニングコストがかかる
不動産を所有すると固定資産税などがかかりますが、法人の場合はそれに加えて法人住民税や法人事業税なども発生します。
たとえ事業が赤字でも、法人住民税の均等割は支払う義務があります。
また、会計処理が複雑になるため、税理士への報酬といったコストも考慮に入れる必要があります。
デメリット③:売却益は個人の譲渡所得ではなく法人税の対象になる
個人が不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には、特別な税率が適用されます。
しかし、法人が所有不動産を売却して得た利益は、他の事業利益と合算され、法人税の課税対象となります。
法人の利益額によっては、個人で売却するより税率が高くなる可能性があります。
デメリット④:審査の準備に手間と時間がかかる可能性がある
法人の事業用ローンは、個人の住宅ローンよりも審査が慎重に行われます。
そのため、決算書や事業計画書など準備すべき書類が多く、手続きも複雑になる傾向があります。
融資実行までスケジュールに余裕を持ち、入念な準備をすることが大切です。
関連記事:不動産担保ローンのデメリットに注意!メリットやおすすめの活用事例も紹介
まとめ
今回は、法人が不動産購入でローンを利用する際の基本について解説しました。
個人向けの住宅ローンは使えませんが、銀行のプロパーローンやノンバンクの不動産担保ローンといった事業用ローンを活用することで、資金調達は可能です。
ローンを活用すれば、事業拡大の大きな足がかりとなるでしょう。
一方で、審査では財務状況や事業計画が問われるため、入念な準備が欠かせません。
もし、銀行の審査に不安がある、赤字決算や設立間もない、あるいはスピーディーな融資を希望するといった場合は、ノンバンクの不動産担保ローンが有効な選択肢となります。
当社「大手町フィナンシャル」は、独自の審査基準で不動産の価値を最大限に評価いたします。
年収や信用情報、決算内容を問わず、お客様の状況に寄り添った最適な融資プランをご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。
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法人での不動産購入ローンに関してよくある質問
法人での不動産購入ローンに関してよくある質問と、その回答をいくつかご紹介します。
Q1. 赤字決算や税金の滞納があると、融資は絶対に受けられませんか?
A.一概に不可能とは言えません。
銀行融資は厳しいですが、ノンバンクの不動産担保ローンでは、決算内容以上に不動産の担保価値を重視します。
赤字の理由が明確で、今後の事業計画に説得力があれば融資を受けられる可能性があります。
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Q2. 会社を設立して間もない(決算期を1度も迎えていない)場合でもローンは組めますか?
A.融資を受けられる可能性はあります。
決算書がなくても、経営者の経歴や自己資金、実現可能性の高い事業計画書を提出することで評価してくれる金融機関もあります。
特に、担保となる不動産の価値が高ければ、ノンバンクなどで対応できる場合があります。
関連記事:【起業・開業】新規事業立ち上げ時の資金調達方法について解説
Q3. 不動産担保ローンの金利相場や返済期間はどのくらいですか?
A.金融機関や審査内容によって大きく異なります。
あくまで目安ですが、金利は銀行で年率2%~4%程度、ノンバンクで年率3%~15%程度です。
返済期間は、物件の耐用年数などに応じて設定され、最長で10年~15年程度が一般的です。
関連記事:不動産担保ローンの金利相場は?低金利で借り入れするポイントを解説
Q4. 個人事業主が事業用の不動産を購入する場合も、ローンは法人と同じ扱いになりますか?
A.事業目的という点では同じですが、審査の視点が一部異なります。
個人事業主も住宅ローンは使えず、不動産担保ローンを利用します。
審査では、確定申告書などで事業の収益性を証明することに加えて、事業主個人の収入や資産状況がより直接的に評価されます。