「赤字決算だから、うちの会社はもう融資を受けられないのではないか」
多くの経営者が抱える深刻な悩みです。
しかし、赤字決算イコール資金調達の道が閉ざされる、と判断するのは早計かもしれません。
赤字の内容や事業の将来性次第では、融資を受けられる可能性が残されています。
この記事では、会社(個人事業を含む)が赤字決算でも融資を諦めないための知識と、具体的な資金調達方法について詳しく解説します。
目次
赤字決算だと融資は受けられない?金融機関の見方とは

決算が赤字になると、多くの金融機関、特に銀行は融資に慎重な姿勢を見せがちです。
企業の返済能力は主に決算書の「利益」から判断されるため、赤字は返済能力が低いと評価される直接的な要因となります。
赤字決算で融資が厳しくなる理由
金融機関が赤字決算を懸念する最大の理由は、融資した資金の回収リスクが高まると判断するからです。
赤字という状況は「事業がうまく行っていない」「返済原資を生み出せていない」というシグナルと受け取られ、審査のハードルが上がってしまいます。
赤字でも資金調達できる可能性がある
一方で、赤字決算であっても資金調達の可能性がゼロになるわけではありません。
金融機関は、赤字の「理由」や「内容」を精査します。
例えば、先行投資が要因の赤字と、本業の不振が続く慢性的な赤字とでは、評価が大きく異なります。
事業計画の説得力や担保の有無次第では、融資に応じてもらえるケースも存在します。
そもそも「赤字決算」とは?
赤字決算とは、一定期間(通常は1年間)の企業活動において、収益よりも支出(費用)が上回り、最終的な利益がマイナスになることを指します。
決算書、特に「損益計算書(P/L)」において、最終的な「当期純利益」がマイナス(当期純損失)となった状態です。
法人の場合
法人の場合、決算書には以下の5つの利益(損失)が記載されます。
- 売上総利益(粗利益):売上高から売上原価を引いた利益。
- 営業利益:本業の儲けを示します。
- 経常利益:企業全体の通常の収益力を示します。
- 税引前当期純利益:一時的な損益を含めた利益。
- 当期純利益:税金を引いた最終的な利益。
融資審査では、特に本業の収益力を示す「営業利益」と、企業全体の収益力を示す「経常利益」が赤字であるかが重視されます。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、確定申告書の「所得金額」がマイナスになることが赤字に相当します。
これは、年間の総収入から必要経費を差し引いた結果、損失が出ている状態を示しています。
赤字決算と「黒字倒産」の違い
赤字決算と混同されやすい言葉に「黒字倒産」があります。
- 赤字決算:損益計算書上の利益がマイナスである状態。
- 黒字倒産:利益はプラス(黒字)であるにもかかわらず、手元の現金が不足し、倒産する状態。
黒字倒産は、売掛金の回収が遅れたりすることで発生します。
金融機関は損益計算書の「利益」だけでなく、現金の動き(キャッシュフロー)も確認し、企業の本当の支払い能力を評価します。
赤字決算でも融資審査に通りやすいケース【良い赤字】

赤字決算であっても、その要因が前向きなものであれば、金融機関も将来性を評価して融資を検討することがあります。
これらは「良い赤字」と呼ばれ、以下のようなケースが該当します。
- 創業期や設備投資による赤字
- 減価償却による赤字(会計上の赤字)
- 一時的な要因(特別損失など)による赤字
- 役員報酬の調整による赤字
ケース①:創業期や設備投資による赤字
創業期や起業直後は、売上が安定する前に先行支出が多くなるため、赤字になりがちです。
また、事業拡大のために新たな設備投資を行った場合も、一時的に赤字になることがあります。
これらは将来の黒字化に向けた必要な投資であり、事業計画書で投資の回収見込みを具体的に示すことがポイントです。
ケース②:減価償却による赤字(会計上の赤字)
減価償却費が大きく計上された結果、会計上は赤字になっているケースです。
重要なのは、減価償却費は実際にお金が出ていく支出ではない点です。
損益計算書上は赤字でも、キャッシュフロー計算書上で現金が残っている場合、金融機関は「実質的には黒字」と評価する可能性があります。
ケース③:一時的な要因(特別損失など)による赤字
本業の営業利益や経常利益は黒字であるものの、その期に限った特別な事情(特別損失)で赤字になったケースです。
- 災害による損失
- 保有資産の売却による損失
- 退職金の大量発生
これらの一時的な要因による赤字は、翌期以降は黒字に回復する可能性が高いと評価されます。
なぜ損失が発生し、今後は発生しない見込みかを明確に説明しましょう。
ケース④:役員報酬の調整による赤字
中小企業において、経営者が意図的に役員報酬を高めに設定した結果、決算が赤字になるケースです。
役員報酬を減額すれば黒字化できる状態であれば、金融機関は実質的な収益力があると判断することがあります。
ただし、節税目的と見なされる側面もあるため、説明には注意が必要です。
赤字決算で融資が困難になるケース【悪い赤字】

金融機関から「悪い赤字」と見なされ、融資が極めて困難になるのは以下のようなケースです。
- 直近2期以上連続した赤字
- 本業の不振による営業赤字
- 債務超過に陥っている
- 利益の私的流用が疑われる赤字
これらの状況に陥っている場合、早急な経営改善が求められます。
ケース①:直近2期以上連続した赤字
1期のみの一時的な赤字であれば説明がつくかもしれませんが、直近で2期、3期と連続して赤字が続く状況は深刻です。
これは、事業の構造自体に問題があり、収益を生み出す力が根本的に欠けていると判断されます。
「経営改善の目処が立たない」と評価され、新規融資は非常に厳しくなるでしょう。
ケース②:本業の不振による営業赤字
赤字の種類の中でも、特に金融機関が問題視するのが「営業赤字」です。
営業利益は、企業が本業でどれだけ稼げているかを示す最も基本的な指標です。
ここが赤字ということは、事業の根幹が揺らいでいる証拠と見なされます。
ケース③:債務超過に陥っている
債務超過とは、企業の負債(借入金など)の総額が、資産(現金、不動産など)の総額を上回っている状態です。
決算書の貸借対照表(B/S)で、「純資産の部」がマイナスになっていることを指します。
これは、過去の赤字が蓄積した状態であり、倒産のリスクが非常に高いと判断されます。
ケース④:利益の私的流用が疑われる赤字
決算書を精査した結果、経営者が会社の資金を私的に流用している(使途不明金が多いなど)と疑われる場合も、融資は難しくなります。
経営者の財務管理能力そのものに疑問符がつき、金融機関からの信用を失ってしまいます。
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赤字決算のメリットとは?戦略的に赤字にする理由

赤字決算は金融機関からの評価を下げる要因となりますが、一方で税務上のメリットが存在するため、経営戦略として意図的に利益を圧縮し、赤字にする企業もあります。
企業が戦略的に赤字にする理由としては、以下のようなものがあります。
- 法人税や住民税(法人税割)の負担軽減
- 欠損金の繰越控除を活用できる
- 欠損金の繰戻し還付を受けられる(法人の場合)
- 損失の繰越し・繰戻し(個人事業主の場合)
理由①:法人税や住民税(法人税割)の負担軽減
最大のメリットは、節税効果です。
法人の場合、利益(課税所得)に対して法人税などが課されます。
決算が赤字であれば、これらの税金は基本的に発生しません(ただし、均等割などは発生します)。
理由②:欠損金の繰越控除を活用できる
赤字(税務上の欠損金)が発生した場合、その損失を翌年以降の黒字と相殺できる制度があります。
これを「欠損金の繰越控除」と呼びます。
青色申告をしている法人であれば、発生した欠損金を最大10年間(※開始事業年度により異なる)繰り越すことが可能です。
理由③:欠損金の繰戻し還付を受けられる(法人の場合)
青色申告をしている中小企業者等(資本金1億円以下など)の場合、当期の赤字を前期の黒字と相殺して、前期に納付した法人税の還付を受けることも可能です。
これを「欠損金の繰戻し還付」と呼びます。
こちらは短期的なキャッシュフロー改善に役立ちます。
理由④:損失の繰越し・繰戻し(個人事業主の場合)
個人事業主の場合も、法人と同様の制度があります。
青色申告をしている個人事業主は、赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越し(繰越控除)、または前年の黒字と相殺(繰戻し還付)することが選択可能です。
赤字決算のデメリットと潜在的リスク

戦略的な赤字であっても、赤字決算には以下のようなデメリットやリスクが伴います。
- 金融機関からの信用低下と資金調達の困難化
- 債務超過による倒産リスク
- 赤字でも支払い義務のある税金(均等割など)
節税メリットとこれらのリスクを天秤にかける必要があります。
デメリット①:金融機関からの信用低下と資金調達の困難化
最大のデメリットは、金融機関からの信用が低下することです。
銀行融資の審査において赤字決算は非常にネガティブな要因です。
いざ運転資金や設備投資資金が必要になった際に、融資が受けられず、事業継続が困難になるリスクをはらんでいます。
デメリット②:債務超過による倒産リスク
赤字が続けば純資産は減少していきます。
赤字が蓄積し、純資産がマイナス、つまり債務超過の状態に陥ると、企業としての信用は地に落ちます。
金融機関からの融資が絶たれるだけでなく、取引先からの信用も失う可能性が高まります。
デメリット③:赤字でも支払い義務のある税金(均等割など)
赤字決算であれば全ての税金が免除されるわけではありません。
法人の場合、利益の有無にかかわらず課税される「法人住民税の均等割」の支払い義務があります。
消費税も、課税売上高が基準を超えていれば、赤字であっても納付義務が生じます。
赤字決算時に融資の可能性を高めるコツ

赤字決算という厳しい状況でも、融資の可能性を少しでも高めるために準備できることがあります。
以下の点を押さえましょう。
- 「良い赤字」であることを論理的に説明する
- 実現可能性の高い経営改善計画書を策定する
- コスト削減など、すでに実行している経営努力を示す
- 試算表をタイムリーに提出し、直近の業績をアピールする
コツ①:「良い赤字」であることを論理的に説明する
もし赤字の理由が「良い赤字」(設備投資など)に該当する場合は、その事実を論理的に説明する資料を準備しましょう。
なぜ赤字になったのか、その赤字が将来の黒字化にどう繋がるのかを、具体的な数値と共に示す必要があります。
コツ②:実現可能性の高い経営改善計画書を策定する
赤字決算の場合、金融機関が最も知りたいのは「今後、どうやって黒字化し、返済していくのか」という点です。
これに応えるのが「経営改善計画書」です。
計画書には、以下の要素を具体的に盛り込むことが求められます。
- 現状の課題分析(なぜ赤字になったのか)
- 具体的な改善策(売上向上策、コスト削減策)
- 数値目標(売上、利益、キャッシュフローの予測)
実現可能性の高い具体的なアクションプランと、説得力のある数値計画を作成することが肝心です。
必要であれば、税理士などの専門家のアドバイスを受けながら作成しましょう。
コツ③:コスト削減など、すでに実行している経営努力を示す
「これから頑張ります」という計画だけでなく、「すでにこれだけの経営努力を実行しています」という実績を示すことも有効です。
役員報酬の削減や経費の見直しなど、すでに着手しているコスト削減策があれば具体的にリストアップします。
コツ④:試算表をタイムリーに提出し、直近の業績をアピールする
決算書はあくまで過去1年間の成績表です。
もし決算期以降、足元の業績が改善傾向にあるならば、月次の試算表を迅速に提出しましょう。
「今期はすでに黒字化の兆しが見えている」ことをアピールします。
赤字決算でも利用可能な資金調達方法

赤字決算で銀行融資が難しい場合でも、諦める必要はありません。
赤字決算でも利用可能な資金調達方法としては、以下のようなものがあります。
- 政府系金融機関(日本政策金融公庫など)
- ビジネスローン
- ファクタリング(売掛債権の売却)
- リースバック(資産の売却と賃借)
- 不動産担保ローン
- その他の資金調達方法
方法①:政府系金融機関(日本政策金融公庫など)
民間の銀行と比べて、政府系の金融機関は赤字企業や創業期の事業者に対しても比較的柔軟に融資を行っています。
特に日本政策金融公庫は、中小企業の支援を目的としており、多様な融資制度を用意しています。
代表的な制度として、以下のようなものがあります。
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
社会的・経済的な環境変化により、一時的に業績が悪化し赤字になった事業者を対象とした貸付制度です。
経営の立て直しに必要な資金の融資を受けられる可能性があります。
新創業融資制度
これから事業を始める方や、創業後間もない方を対象とした制度です。
創業期の赤字は織り込み済みで審査されるため、事業計画の将来性が評価されれば、無担保・無保証人で融資を受けられる可能性があります。
方法②:ビジネスローン
ビジネスローンは、銀行やノンバンクが提供する事業者向けのローンです。
銀行融資に比べて審査スピードが早く、柔軟に評価する傾向があります。
ただし、金利は銀行融資よりも高めに設定されていることが多いため、返済計画を慎重に立てる必要があります。
方法③:ファクタリング(売掛債権の売却)
ファクタリングは、保有している「売掛金(未回収の請求書)」を売却し、早期に現金化する資金調達方法です。
融資(借入)ではないため、自社の決算状況よりも、売掛先の信用力が重視されます。
キャッシュフローが悪化している場合に有効な手段です。
方法④:リースバック(資産の売却と賃借)
リースバックは、自社が保有する不動産や設備を専門の会社に売却し、売却後もそのまま賃料を払って使い続ける方法です。
資産を売却することでまとまった資金を調達できますが、毎月のリース料(賃料)が発生します。
方法⑤:【赤字でも相談可能】不動産担保ローン
これは、所有する不動産を担保に入れることで融資を受ける方法です。
もし自社(または経営者個人)が不動産を所有している場合、不動産担保ローンは赤字決算時における強力な資金調達の選択肢となります。
なぜ赤字でも不動産担保ローンが有効か?
銀行融資(無担保)が企業の「信用力(決算内容)」を基に融資を行うのに対し、不動産担保ローンは「担保となる不動産の価値」を重視するからです。
万が一返済が滞っても、金融機関は担保不動産を売却することで貸付金を回収できるため、赤字決算でも融資を実行できる可能性が高まります。
メリット1:決算内容より担保価値や事業計画を重視
不動産担保ローン専門の金融機関(ノンバンクなど)は、銀行とは異なる独自の審査基準を持っています。
過去の赤字決算という事実よりも、担保不動産の資産価値や、今後の事業計画の将来性を総合的に評価する傾向が強いです。
メリット2:銀行融資より柔軟な審査基準
銀行では融資を断られた場合でも、不動産担保ローン専門の会社であれば対応可能なケースが少なくありません。
赤字決算だけでなく、税金の滞納、債務超過、創業間もないといった状況でも、担保価値次第で柔軟に審査してもらえます。
メリット3:高額・長期の借入が期待できる
担保不動産の評価額に応じて、高額な資金調達が可能です。
また、返済期間も長期に設定できることが多いため、月々の返済負担を抑え、事業の立て直しに取り組むことができます。
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方法⑥:その他の資金調達方法
上記以外にも、以下のような方法が考えられます。
クラウドファンディング
インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達する方法です。
事業内容や商品・サービスに共感が集まれば、赤字でも資金調達が可能です。
親類縁者からの借入
経営者の親族や知人から個人的に資金を借り入れる方法です。
トラブルを避けるためにも、借用書を作成するなどルールを明確にしておくことが肝心です。
まとめ:赤字決算時に融資を希望する際は、専門家へ相談しましょう
赤字決算だからといって、資金調達を諦めるのはまだ早いです。
赤字には「良い赤字」と「悪い赤字」があり、その理由と今後の黒字化に向けた計画を説明できれば、融資の可能性は残されています。
特に、不動産を所有している場合は、決算内容だけでなく担保価値や事業計画を重視する不動産担保ローンが有効な解決策となるかもしれません。
大手町フィナンシャルでは、赤字決算や創業間もない法人・個人事業主様からのご相談にも、独自の審査基準で柔軟に対応しております。
不動産担保ローンに関する豊富な実績を持つ専門スタッフが、最適な資金調達プランをご提案します。
銀行融資を断られてしまった場合でも、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
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赤字決算融資に関するQ&A

赤字決算時の融資に関してよくある質問と、その回答をいくつかご紹介します。
Q1.赤字決算が続くと、銀行融資はいつまで受けられますか?
A.明確な基準はありませんが、一般的に2期連続の赤字で厳しくなり、3期連続の赤字では新規融資は極めて困難になると言われています。
特に本業の儲けを示す「営業利益」が連続して赤字の場合、事業の継続性に重大な懸念があると判断されます。
ただし、赤字の理由や金融機関との取引実績、担保の有無などによって総合的に判断されます。
Q2.「良い赤字」とは具体的にどのような状態ですか?
A.将来の黒字化や成長に繋がる、一時的または計画的な赤字のことです。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 創業期の先行投資(人件費、広告費など)による赤字
- 事業拡大のための大規模な設備投資による赤字
- 減価償却費の計上による会計上の赤字(キャッシュフローはプラス)
- 災害など、一時的な特別損失による赤字
Q3.不動産担保ローンなら、赤字でも必ず融資を受けられますか?
A.必ず融資を受けられるわけではありません。
不動産担保ローンは、赤字決算の企業にとって有効な選択肢ですが、審査は必ず行われます。
担保となる不動産の価値が低い場合や、事業計画の実現可能性が著しく低い場合は、融資を断られることもあります。
Q4.融資相談の際、最低限準備すべき書類は何ですか?
A.金融機関によって異なりますが、一般的に以下の書類の準備が推奨されます。
- 決算書(直近2〜3期分)
- 確定申告書(法人の場合は法人税申告書)
- 試算表(直近の月次データ)
- 事業計画書・経営改善計画書(赤字の場合は特に重要)
- (不動産担保ローンの場合)不動産の登記簿謄本など
事前に相談先に必要な書類を確認し、スムーズに審査へ進めるよう準備しておきましょう。
