借地権付き建物を相続すると、建物だけでなく借地契約も相続人に継承されます。
この記事では、借地権を相続する際の手続きと流れ、必要書類や費用など、借地権を相続する前後に必ず押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
目次
そもそも借地権とは
借地権とは、建物を建てる目的で土地を借りるための権利のことです。
土地を借りる人を「借地人」、土地を貸す人を「地主」と呼び、借地人は地主に地代(賃料)を支払うことで土地の上に建物を建て、利用することができます。
借地権につきましては、以下の記事で詳しく解説しておりますのであわせてご参照ください▼
借地権とは?借地権の種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説
借地権の相続には地主の承諾が不要!
法定相続人が借地権を相続する際に、地主の承諾を得る必要はありません。
また、土地の返還、土地の賃貸借契約書の再締結、譲渡承諾料(名義変更料)の支払いも不要です。
しかし、義務ではないものの、トラブル防止の観点から、地主に対して借地権を相続した旨を通知するのが一般的です。
借地権を「遺贈」する場合は地主の承諾が必要
借地権を、法定相続人による相続ではなく、第三者に「遺贈」する場合は譲渡と同じ扱いになり、地主の承諾に加えて譲渡承諾料(名義変更料)の支払いも必要になります。
相続と遺贈の違いは以下の通りです。
相続・・・法律で定められた相続人(法定相続人)が、被相続人(亡くなった人)の財産を自動的に受け継ぐ権利を得る。 |
遺贈・・・被相続人が遺言書で、特定の人に財産を与えることを指定する。法定相続人以外の第三者にも財産を与えることができる。財産を遺贈される人は「受遺者」と呼ばれる。 |
遺言状の内容に沿って第三者が借地権の受遺者となる場合は、地主に承諾を求め、承認された後に譲渡承諾料を支払い所有権を移転させます。
もしも地主が承認しない場合は、家庭裁判所に申し立てることで、地主の代わりに借地権譲渡の承諾をしてもらうことも可能です。
ちなみに、地主に支払う譲渡承諾料(名義変更料)の相場は、借地権価格の10%程度と言われています。
借地権を相続する際の手続きと流れ
借地権を相続する際の手続きと流れは、以下の通りです。
- 地主に相続が発生する旨を連絡する
- 借地権の契約内容を把握する
- 遺言書または遺産分割協議の結果に従い、相続人を決める
- 借地権付き建物の相続登記(名義変更)を行う
- 地主に、相続人が決定した旨を連絡する
それぞれ解説します。
地主に相続が発生する旨を連絡する
前述の通り、法定相続人が借地権を相続する場合、地主の承諾を得る必要はありません。
しかし、今後も地主との関係は続くことを考えると、被相続人が亡くなった時点で地主に連絡し、相続が発生する旨を伝えておくべきです。
今後のトラブルを防止するために、相続の手続きを進めている間の地代は誰が払うか、なども話し合って決めておくと良いでしょう。
また、「相続人間で相続人が確定しない」などの理由で地代の滞納が続くと、債務不履行によって借地契約が解除されてしまうことにも注意しておきましょう。
借地権の契約内容を把握する
登記事項証明書(登記簿謄本)・地代の振込履歴・土地賃貸契約書などの書類を確認し、借地権の契約内容を把握します。
具体的には、借地権の種類、契約期間、地主、地代をチェックします。
遺言書または遺産分割協議の結果に従い、相続人を決める
次に、誰が借地権を相続するかを決めます。
遺言書で相続人が指定されている場合はそれに従いますが、そうでない場合は、「遺産分割協議」で相続人を決めることを目指します。
遺産分割協議とは・・・相続人全員で行う、遺産の分け方を決めるための話し合いのこと。もしも遺産分割協議で相続人が決まらない場合は、第三者の調停委員に仲介してもらう「遺産分割調停」での解決を目指し、それでも決まらない場合は、家庭裁判所が結論を示す「遺産分割審判」にて強制的に相続人を決定する。 |
借地権の相続人が決まったら、遺産分割協議書を作成※し、相続人全員が署名・捺印します。
なお、相続人が相続放棄をしたり、そもそも相続人がいなかったりする場合は、地主が家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てます。
※遺言書で借地権の相続人が決まっている場合は、借地権に関する遺産分割協議書の作成は不要です。
借地権付き建物の相続登記(名義変更)を行う
相続人は必要書類を揃えた後、相続する不動産を管轄する法務局で、借地権付き建物の相続登記(名義変更)を行います。
相続登記(名義変更)とは、借地権付き建物の登記を被相続人名義から相続人に名義を移転する手続きのことです。
相続登記(名義変更)の申請方法は、以下の2種類です。
- 法務局の窓口で申請する
- 法務局に必要書類を郵送して申請する
なお、必要書類につきましては、後章の「借地権付き建物の相続登記(名義変更)に必要な書類」にて詳しく解説します。
地主に、相続人が決定した旨を連絡する
借地権付き建物の相続登記(名義変更)が完了し、正式に相続人が確定した時点で地主に連絡します。
相続人の名前などの情報を地主に伝えるのはもちろん、このタイミングであいさつを済ませておくことは、今後も地主と良好な関係性を維持していくために重要です。
ちなみに、相続した借地権を法人利用するなどの計画がなく、住宅などの一般的な用途で利用する予定であれば、口頭だけの連絡で問題ありません。
また、土地の賃借契約書の名義変更も不要です。
借地権付き建物の相続登記(名義変更)に必要な書類
借地権付き建物の相続登記(名義変更)に必要な書類と、取得する目的は以下の通りです。
あああ
書類の名前 | 取得する目的 |
被相続人の戸籍謄本 | 被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍を証明し、相続人の範囲を明確にする。 |
相続人全員の戸籍謄本 | 相続人全員の戸籍を証明し、相続人の範囲を明確にする。 |
被相続人の住民票の除票、もしくは戸籍の附票 | 被相続人の最後の住所を確認・証明し、相続手続きを行うべき場所を特定する。 |
相続人の住民票、もしくは戸籍の附票 | 相続人の現住所を証明するための書類。相続人の現在の住所を確認し、連絡が取れるようにする。 |
遺言書、または遺産分割協議書 | 被相続人の意思表示(遺言書)または相続人全員の合意(遺産分割協議書)に基づき、遺産の分割方法を定める。 |
固定資産評価証明書 | 登録免許税の計算に必要 |
登記申請書 | 登記手続きを法務局に申請する。 |
(相続人全員の印鑑証明書) | 遺産分割協議書を提出する場合のみ必要。遺産分割協議書に押印された印鑑が本物であることを証明する。 |
(委任状) | 借地権の名義変更手続きを、弁護士や司法書士に依頼する場合のみ必要。委任の事実を証明する。 |
借地権の相続にかかる費用
借地権の相続にかかる費用は、以下の通りです。
- 必要書類の取得費用
- 相続税
- 登録免許税
- その他費用
それぞれ解説します。
必要書類の取得費用
戸籍謄本や固定資産評価証明書などの必要書類を取得するためには、1通あたり数百円程度の発行手数料がかかります。
相続税
相続税とは、被相続人から不動産などの財産を相続する時、その財産に対してかかる税金のことです。
借地権は相続財産であるため、相続税がかかります。
登録免許税
登録免許税とは、不動産、会社、人の資格などについての登記や登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定および技能証明について課税される税金のことです。
借地権付き建物の相続登記にあたっては、以下の2種類の登録免許税がかかります。
- 建物の所有権移転登記にかかる登録免除税(固定資産税評価額 × 0.4%)
- 借地権の名義変更に関する登録免許税(固定資産税評価額 × 0.2%)
その他費用
場合によっては、以下のような費用が別途かかることもあります。
- 司法書士費用・・・相続登記手続きを司法書士に依頼する場合に必要。
- 不動産鑑定費用・・・借地権の評価額を正確に算出するために、不動産鑑定士に評価を依頼する場合に必要。
- 測量費用・・・借地の境界線がはっきりせず、隣地との関係が不明確な場合、境界を確定するために必要。
借地権を相続する際の注意点
最後に、借地権を相続する際に注意しておきたい、以下のポイントについて解説します。
- 借地権付き建物の相続登記(名義変更)は、3年以内に行う必要がある
- 建物の税金は借地人が負担する
- 定期借地権の相続は要注意
借地権付き建物の相続登記(名義変更)は、3年以内に行う必要がある
令和6年4月1日から、相続により不動産を取得した場合、原則として3年以内に相続登記を行うことが義務化されました。
これは、不動産の所有者に関する情報を正確に把握し、「所有者不明不動産」などの問題を未然に防ぐことを目的としています。
借地権付き建物も不動産の一種であるため、相続登記の義務化の対象となります。
3年以内に相続登記を完了しない場合は、ペナルティとして10万円以下の「過料」が課される可能性があります。
過料は、犯罪に対する刑罰である罰金・科料とは異なり、課されることで前科が付くことはありませんが、本来支払う必要のないお金なので相続登記は期限内に行うようにしましょう。
建物分の税金は借地人が負担する
相続によって借地を取得した場合、建物部分に関する固定資産税や都市計画税の納税義務は借地人にあります。
それは、借地人が建物を所有しているためです。
ただし、土地部分にかかる固定資産税や都市計画税は、引き続き土地の所有者である地主が負担します。
定期借地権の相続は要注意
定期借地権は、存続期間が決まっているタイプの借地権です。
定期借地権付きの建物を相続したとしても、借地人は存続期間が終了する時に建物を取り壊し、土地を更地にしたうえで地主に返還しなければなりません。
また、借地人による「建物買取請求権」の行使は原則として認められず、契約の更新・延長もありません。
そのため、自分が相続しようとしている借地権が普通借地権・定期借地権のどちらなのかは、必ず確認しておきましょう。
借地権の相続でよくあるトラブルにつきましては、こちらの記事にて詳しく解説しています▼
借地権の相続でよくあるトラブルとその対処法とは?
大手町フィナンシャルなら、相続した借地権付き建物を担保にお金が借りられる!
大手町フィナンシャルは、一般的な不動産はもちろん、借地権・底地、共有名義不動産・共有持分といった特殊な不動産も担保の対象としております。
借地権の場合は、「地主に知られずに融資を受けたい」「借地権の契約書なしで借り入れしたい」といったご相談にもご対応可能です。
また、最短翌日のスピード融資、全国対応可能、資金使途は不問といった弊社ならではの強みもございますので、不動産担保ローンのご利用をお考えの方は、ぜひ大手町フィナンシャルにご相談ください。