事業の拡大や運転資金の確保に、「融資」は欠かせない手段です。
しかし、融資には様々な種類があり、自社に最適な融資を選ぶのは簡単なことではありません。
本記事では、融資の基礎知識から、公的融資・民間融資の違い、それぞれの融資制度の特徴や、そして融資を受ける際の注意点まで、分かりやすく解説します。
目次
そもそも融資とは?
融資とは、銀行などの金融機関が、企業や個人事業主に対して、事業資金などを貸し付けることです。
融資を受けた側は、あらかじめ決められた返済期間内に、元金と利息を合わせて返済する義務を負います。
金融機関は、貸し付けた資金が返済されることで利益を得る仕組みです。
融資は、事業の成長を加速させたり、運転資金の不足を補ったり、設備投資を行ったりする際に有効な手段となります。
出資と融資の違い
資金調達の方法には、融資のほかに「出資」があります。
出資は、投資家などが企業に対して資金を提供し、株式や持分を取得することです。
融資とは異なり、出資された資金は原則として返済義務がありません。
ただし、出資者は企業の経営に関与する権利を持つことが一般的であり、企業の利益に応じて配当を受け取ったり、株式の売却益を得たりすることを期待します。
一方、融資の場合は、金融機関は経営に関与せず、あくまでも契約に基づく金利収入を得ることを目的とします。
どちらが適しているかは、企業の状況や資金使途によって異なります。
融資には主に4つの形態がある
法人向けの融資には、主に以下の4つの形態があります。
- 当座貸越
- 証書貸付
- 手形貸付
- 手形割引
これらの融資形態は、それぞれ特徴が異なり、資金使途や返済期間などによって使い分けることが一般的です。
ただし、すべての金融機関や融資制度で、これら4つの形態すべてが利用可能とは限りません。
利用を検討している金融機関や融資制度が、どの形態に対応しているかを事前に確認する必要があります。
当座貸越
法人向けの当座貸越(とうざかしこし)とは、あらかじめ金融機関と契約して設ける融資枠(極度額)の範囲内で、企業が必要に応じて自由に資金を借り入れたり、返済したりできる柔軟な融資形態です。
この融資形態は、企業の当座預金口座や普通預金口座に付帯されることが多く、口座残高が不足した場合でも、設定された融資枠まで自動的に融資が実行される便利な仕組みとなっています。
借入可能な上限額は、企業の信用力評価に基づいて設定されるほか、定期預金などを担保とすることで設定される場合もあります。
入金があれば自動的に返済に充てられ手続きも簡便なため、売掛金の入金遅れや急な支払いといった一時的な資金不足に対し、都度の審査なしで迅速に対応でき、資金繰りの安定化に貢献します。
利息は実際に借入れている残高に応じて発生します。
証書貸付
証書貸付は、ひと言でいうと「借用書を書いてお金を借りる」ことを指します。
金融機関に対して、返済期間や金額、利息などを明記した「金銭消費貸借契約証書(借用証書)」を差し入れることで融資を受けます。
主に短期の運転資金の調達に用いられます。
手形貸付
手形貸付※は、企業が金融機関を受取人とする「約束手形」を振り出し、その手形と引き換えに融資を受ける方法です。
主に短期の運転資金調達に用いられ、手形の支払期日に元金を一括返済するのが一般的です。
※手形交換所システムを使った紙の手形・小切手の決済は、2026年度末(2027年3月末)に廃止される方向です。なお、廃止対象はあくまで紙媒体のみで、でんさい(電子記録債権)などの電子的な手段は今後も利用可能です。
手形割引
手形割引は、満期前の手形を金融機関に買い取ってもらうことで、期日前に現金化する方法です。
満期日までの利息や手数料が差し引かれた金額が支払われます。
売掛債権の早期資金化の手段として利用されます。
法人向け融資の種類は「公的融資」と「民間融資」のいずれかに分類される
法人向けの融資は、以下の2種類に大別できます。
- 公的融資
- 民間融資
法人向け融資の種類:公的融資
公的融資は、低金利で、長期の返済期間を設定できる場合があるなど、民間の金融機関からの融資に比べて有利な条件で借り入れできる可能性があります。
法人向けの公的融資としては、以下の3種類が代表的です。
- 日本政策金融公庫の融資
- 地方自治体の制度融資
- 信用保証協会の保証付き融資
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、国が100%出資する政府系金融機関です。
中小企業や小規模事業者、創業予定の企業などを対象に、様々な融資制度を提供しています。
日本政策金融公庫の融資は、一般的に、銀行などの民間金融機関と比較して、低金利かつ長期の返済期間を設定できる傾向があります。
また、無担保・無保証人で利用できる融資制度や、新規開業資金、女性、若者/シニア起業家支援資金など、特定の条件を満たす事業者向けの融資制度も充実しています。
融資の形態としては、証書貸付が一般的ですが、要件によっては当座貸越の利用も可能です。
融資を申し込む際は、事業計画書や決算書などの必要書類を提出し、審査を受ける必要があります。日本政策金融公庫は、事業の成長可能性や経営者の資質などを総合的に判断し、融資の可否を決定します。
地方自治体の制度融資
地方自治体の制度融資は、各都道府県や市区町村が、地域経済の活性化や中小企業の経営支援を目的として設けている融資制度です。
自治体と金融機関、信用保証協会の三者が連携する仕組みで、自治体が金融機関に融資原資の一部を預託し、金融機関が融資を実行、信用保証協会が保証を行います。
金利や融資限度額、返済期間などの融資条件は自治体ごとに異なりますが、日本政策金融公庫の融資と同様、低金利で長期の返済期間を設定できる場合があります。
制度融資を利用する際の原則的な条件は、その自治体内に事業所があることです。
この融資も、証書貸付形式が一般的ですが、当座貸越の形態で利用できる場合もあります。
制度融資の利用を検討する際は、まずは事業所のある自治体の窓口やホームページで情報を確認し、自社の事業に合った融資制度があるか確認することをおすすめします。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際、保証人となる公的機関です。
信用保証協会の保証付き融資は、事業者が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証を行うことで、融資を受けやすくする制度です。
信用保証協会の保証を利用することで、無担保・無保証人でも融資を受けられる可能性が広がります。
また、信用力が高まるため、金融機関からより有利な条件で融資を受けられることもあります。
保証の形態としては、証書貸付や手形貸付、当座貸越など、様々な融資に対応しています。
ただし、手形割引については、信用保証協会の保証対象外となることが一般的です。
信用保証協会を利用する際には、保証料の支払いが必要になります。
保証料は、融資金額や保証期間、企業の信用力などに応じて決定されます。
信用保証協会への申し込みは、通常、融資を希望する金融機関を通じて行います。
法人向け融資の種類:民間融資
法人向けの民間融資は、主に銀行、信用金庫・信用組合、ノンバンクなど、民間金融機関から受けることができます。
それぞれの融資商品には特徴があり、貴社の状況や資金使途によって最適な選択肢は変わってきます。
法人向けの民間融資としては、以下の7種類が代表的です。
- 銀行のプロパー融資
- 信用金庫・信用組合の融資
- ノンバンクの融資
- ビジネスローン
- カードローン
- 売掛債権担保融資(ABL)
- 不動産担保ローン
銀行のプロパー融資
銀行のプロパー融資は、保証協会の保証などを付けずに、銀行が直接リスクを負って融資する商品です。
そのため、審査は厳格で、企業の財務状況、事業の将来性、経営者の資質、銀行との良好な関係性などが総合的に判断されます。
プロパー融資は、他の融資と比べて、一般的に金利が低く設定される傾向にあります。
融資を受ける企業の信用力が高いほど、好条件を引き出しやすくなるでしょう。
融資形態としては、主に証書貸付が利用されますが、当座貸越、手形貸付、手形割引の形式で利用できる場合もあります。
どの形態が適しているかは、資金使途や返済計画によって異なります。
銀行融資につきましては、こちらの記事もあわせてご参照ください▼
法人向け銀行融資の種類|審査に通るポイントや条件、流れも解説
信用金庫・信用組合の融資
信用金庫・信用組合は、地域密着型の金融機関であり、中小企業や個人事業主を主な顧客としています。
銀行と比較すると、融資の審査は柔軟な傾向にあり、地域経済への貢献度や事業の将来性なども考慮される点が特徴的です。
組合員向けの融資制度が充実している場合もあり、金利や融資条件で優遇を受けられる可能性があります。
融資形態は、証書貸付が一般的ですが、当座貸越、手形貸付、手形割引も利用可能です。
信用金庫・信用組合は、地域に根差した経営をされている企業にとって、心強い資金調達のパートナーと言えるでしょう。
ノンバンクの融資
ノンバンクとは、預金業務を行わない金融機関のことで、融資業務を専門としています。
消費者金融や信販会社、リース会社などが該当します。
銀行融資と比較すると、審査スピードが速く、柔軟な対応が期待できる点が特徴です。
一方で、金利は高めに設定される傾向があります。
ノンバンクは、銀行融資の審査に通過が難しい場合や、迅速な資金調達が必要な場合の有力な選択肢となりえます。
融資形態としては、証書貸付が一般的ですが、当座貸越の形式での融資に対応している場合もあります。
ノンバンクにつきましては、こちらの記事もあわせてご参照ください▼
ノンバンクから法人融資を受ける際の3つの審査ポイントとは?
ビジネスローン
ビジネスローンは、事業資金の調達を目的とした法人・個人事業主向けの融資商品です。
銀行やノンバンク、消費者金融など、さまざまな金融機関が取り扱っています。
無担保・無保証人で利用できる商品が多く、審査スピードが速い点が特徴です。
一方で、金利は比較的高めに設定されています。
融資限度額は、数百万円から数千万円程度が一般的です。
資金使途は、原則として事業資金に限られ、運転資金や設備投資などに利用できます。
融資形態は、主に証書貸付ですが、当座貸越のタイプの商品もあります
カードローン
法人向けのカードローンは、事業資金にも利用できるローンカードのことです。
あらかじめ設定された利用限度額の範囲内であれば、自由に借り入れと返済が可能です。
銀行やノンバンクが発行しており、ATMやインターネットを通じて手軽に利用できる点がメリットです。
ただし、金利は比較的高く、計画的な利用が重要になります。
カードローンは、当座貸越の形式での融資であり、急な資金需要が発生した場合に、スピーディーに対応できる点が強みです。
売掛債権担保融資(ABL)
売掛債権担保融資(ABL)は、企業が商品やサービスを販売して得た売掛金(将来的に受け取る予定のお金)を担保にして、銀行などから融資を受ける方法です。
よく似たサービスにファクタリングがありますが、ファクタリングは売掛金を買い取ってもらう(債権譲渡)のに対し、売掛債権担保融資は売掛金を担保に入れる点が大きく異なります。売掛債権担保融資の場合、あくまで売掛金は自社のものであり、融資の返済が滞った場合に、担保としていた売掛金から返済に充てられることになります。
売掛債権担保融資の審査では、融資を申し込む企業の信用力だけでなく、売掛先(商品やサービスを購入した企業)の信用力も確認されます。
これは、売掛金がきちんと回収できるかどうかを見極めるためです。
融資形態は、証書貸付が一般的ですが、手形貸付が利用されることもあります。
売掛金を利用する融資につきましては、こちらの記事もあわせてご参照ください▼
売掛金を利用して資金調達する方法|売掛債権担保融資とファクタリング
不動産担保ローン
不動産担保ローンは、所有する不動産(土地や建物)を担保として融資を受ける方法です。
担保価値によって融資額が決まるため、高額な資金調達が可能となるケースもあります。
銀行や信用金庫、信用組合、ノンバンクなど、多くの金融機関が取り扱っており、金利は比較的低めに設定される傾向にあります。
返済期間は10~15年など長期にわたることが多く、資金使途は原則自由です。
融資形態は、主に証書貸付が利用されますが、根抵当権を設定したうえで当座貸越の形式で融資を受けられるケースもあります。
融資を受ける際に注意すべきポイント
法人向け融資の審査をスムーズに進め、希望する条件で融資を受けるために抑えておきたいポイントは、以下の通りです。
- 可能な限り自己資金を用意しておく
- 返済能力を証明できるようにしておく
- 金融機関との信頼関係を築く
- 事業計画書を綿密に作りこむ
- 担保を用意する
可能な限り自己資金を用意しておく
法人向け融資の審査では、自己資金の割合が重視される傾向にあります。
自己資金は、事業への熱意や経営者の覚悟、事業の安定性を示す指標と捉えられるためです。
一般的に、融資希望額の3割程度の自己資金があれば、審査が有利に進む可能性があると言われています。
潤沢な自己資金は、不測の事態への備えとなり、金融機関からの信頼を高める要素となるでしょう。
返済能力を証明できるようにしておく
金融機関が融資の可否を判断する上で、最も重視するポイントの一つが、申込企業の返済能力です。
そのため、融資を希望する際には、返済能力をしっかりと示す必要があります。
金融機関は通常、決算書や確定申告書などの財務諸表の提出を求め、売上高、利益、現預金の流れなどを確認します。
これらの情報から、事業の継続性や将来性、そして何より融資した資金をきちんと返済できるか、といった点を総合的に評価します。
例えば、直近の決算が赤字であったり、借入金が過剰な状態であったりすると、返済能力に不安があると判断され、審査に影響が出る可能性があります。
ちなみに、大手町フィナンシャルの不動産担保ローンは、あくまでも不動産の担保価値を重視して融資審査を行います。
そのため、赤字企業や信用情報に自信がない方、他社に断られてしまったお客様にもご融資できる可能性がございます。
不動産をお持ちで、資金調達を検討されている方は、ぜひ一度当社にご相談ください。
金融機関との信頼関係を築く
融資の審査は、書類上の情報だけでなく、経営者の人柄や事業に対する熱意、金融機関とのコミュニケーションなども影響します。
日頃から、金融機関の担当者と良好な関係を築き、自社の事業内容や経営状況について情報共有をしておくことをおすすめします。
定期的な面談や情報提供を通じて、金融機関からの信頼を得られれば、融資の相談もしやすくなり、審査も円滑に進む可能性があります。
事業計画書を綿密に作りこむ
事業計画書は、融資の審査において最も重要な書類の一つです。
事業の概要、市場の動向、競合との比較、販売戦略、収益予測などを具体的に記載し、事業の将来性や成長性、融資の必要性を明確に伝える必要があります。
数値の根拠を明確にし、実現可能な計画を立てましょう。
説得力のある事業計画書を作成することで、金融機関からの評価を高め、融資の成功確率を上げることができます。
担保を用意する
不動産などの担保を提供することで、融資の審査が有利になる場合があります。
担保があれば、金融機関は貸し倒れリスクを軽減できるため、融資のハードルが下がり、より高額な融資を受けられる可能性や、金利などの条件が優遇される可能性も高まります。
特に、不動産担保ローンは、他の融資形態に比べて、高額・長期の融資を受けやすい傾向があります。
まとめ
融資は法人にとって、事業の成長を支える重要な資金調達手段です。
公的融資と民間融資の違いや、融資の種類ごとに異なる特徴を理解したうえで、自社の状況に最適な融資を見極めましょう。
大手町フィナンシャルは、不動産担保ローンを専門とする会社です。
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