相続や共同購入で不動産を共有名義にしたものの、「売却しようとしたら他の共有者と揉めて売却できない」というトラブルは少なくありません。
しかし、共有名義不動産が「売却できない」というのは、必ずしも事実ではありません。
この記事では、共有名義不動産が売却できないと言われる理由と、具体的な対処法、自分の持分のみを売却する際の注意点まで詳しく解説します。
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目次
共有名義不動産が「売却できない」と言われる本当の理由
「共有名義不動産は、売却したくてもできず、トラブルになりやすい」とよく言われます。
しかし、なぜ「売却できない」状況に陥ってしまうのでしょうか。
それには、不動産全体を売却する場合と、ご自身の権利(持分)のみを売却する場合の、法律上の大きな違いが関係しています。
まずは、共有名義不動産の基本的な仕組みと、売却が困難になる本当の理由から解説します。
そもそも共有名義不動産とは?
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共有名義不動産とは、一つの不動産(土地や建物)を複数人で所有している状態のことです。
登記簿には所有者全員の名前と、それぞれの「持分(もちぶん)」が記載されます。
相続や夫婦での共同購入が主な原因です。
共有持分と持分割合について
共有持分(持分)とは、その不動産に対する所有権の割合です。
この割合を「持分割合」といい、「2分の1」といった分数で登記されます。
持分割合は、購入時の出資額や遺産分割協議によって決まります。
これは不動産の「特定の場所」を所有する権利ではなく、不動産全体に対する権利の割合を意味します。
不動産が共有名義になる主な原因(相続・共同購入)
不動産が共有名義になる主な原因は「相続」と「共同購入」です。
- 相続:親が亡くなり、複数の子供が実家を共同で相続するケースです。
遺産分割協議で安易に共有名義を選択すると、権利関係が複雑化しがちです。 - 共同購入:夫婦でマイホームを共同購入する際や、二世帯住宅を建てる際に、出資割合に応じて共有名義にするケースです。
不動産「全体」の売却には共有者全員の同意が必要

共有名義不動産が「売却できない」と言われる最大の理由は、不動産全体を売却(処分)する場合、共有者全員の同意が必要だからです(民法第251条)。
一人でも反対する共有者がいれば、その不動産全体を法的に売却することはできません。
価格交渉がまとまらない場合や、共有者と連絡が取れない場合も同様です。
「自分の持分のみ」なら他の共有者の同意なしで売却可能
一方で、自分自身が所有する「共有持分」のみであれば、他の共有者の同意なしで自由に売却できます。(民法第206条)
これは各自の持分が独立した所有権として認められているためです。
持分の売却には、主に以下の2つの方法があります。
- 仲介:不動産会社に依頼し、一般の個人や投資家など、買い手を探してもらう方法です。
- 買取:共有持分を専門に扱う不動産業者などに、直接買い取ってもらう方法です。
「買取」はスピーディーな現金化が期待できる一方、「仲介」は時間をかけて希望条件に近い買い手を探せる可能性があります。
どちらの方法も、他の共有者とのトラブルを回避し、ご自身の問題を解決する有効な手段となり得ます。
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共有名義不動産が売却できない時の4つの対処法
不動産全体の売却に同意が得られない場合、対処法は主に以下の4つです。
- 他の共有者へ売却(買取)
- 第三者へ持分売却(専門業者)
- 分筆(土地のみ)
- 共有物分割請求訴訟(裁判)
対処法①:他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう
最も穏便な解決方法は、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらうことです。
まずは売却したい意思と希望価格を伝え、話し合いの場を持ちましょう。
個人間で売買する際の注意点
共有者間の個人売買は仲介手数料がかかりませんが、売買価格の設定でトラブルになりがちです。
不動産会社に査定を依頼し、客観的な相場価格を基準に交渉しましょう。
契約書作成や登記手続きは、司法書士などの専門家に依頼するのが安全です。
対処法②:第三者に自分の持分を売却する
他の共有者が買取に応じない、または話し合いが困難な場合は、第三者(主に専門の買取業者)に自分の持分を売却する方法を検討します。
この方法なら他の共有者の同意は不要で、スピーディーに現金化できる可能性があります。
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対処法③:土地の場合は「分筆」して単独名義にして売却する
対象が土地である場合、「分筆(ぶんぴつ)」が可能なケースがあります。
分筆とは、一つの土地を登記上複数の土地に分けることです。
共有者間で合意の上、土地を持分割合に応じて分筆し、各自が単独名義にすれば、その後は自由に売却できます。
ただし、土地の形状や法律上の制約で分筆が困難な場合もあり、測量費用も発生します。
対処法④:共有物分割請求訴訟(裁判)で強制的に解決する
話し合いで解決不可能な場合の最終手段が、「共有物分割請求訴訟」です。
裁判所に共有状態の解消方法を決定してもらう手続きです。
裁判所は、以下のいずれかの方法で分割を命じます。
- 現物分割:不動産そのものを物理的に分割する方法(例:土地の分筆)。
- 代償分割:共有者の一人が不動産全体を取得し、他の共有者に持分相当の金銭を支払う方法。
- 換価分割:不動産全体を競売などで売却し、代金を持分割合に応じて分配する方法。
裁判は時間も費用もかかりますが、強制的に問題を解決できます。
実行する場合は、共有持分を専門とする不動産会社または、弁護士への相談が必須です。
共有名義のまま不動産を所有し続ける4つのリスク

共有名義のまま不動産を所有し続けることには、以下のようなリスクが伴います。
- 固定資産税や修繕費用の負担が続く
- 相続が発生し、共有者が増えて権利関係が複雑化する
- 共有者間でのトラブル(管理・利用方針の違い)
- 他の共有者が持分を売却し、見知らぬ第三者が共有者になる
リスク①:固定資産税や修繕費用の負担が続く
不動産を所有する限り、固定資産税や修繕費用の負担が続きます。
共有名義の場合、共有者全員が連帯して納税義務を負うため、誰かが支払わなければ他の共有者が立て替える必要があります。
リスク②:相続が発生し、共有者が増えて権利関係が複雑化する
共有者の一人が亡くなると、その持分は相続の対象となります。
相続人が複数いれば、持分がさらに細分化され、共有者の数が増加します。
共有者が増えるほど、売却などの合意形成は困難になります。
リスク③:共有者間でのトラブル(管理・利用方針の違い)
不動産の利用・管理方針(居住、賃貸、売却など)で意見が対立し、トラブルに発展しやすいです。
特に、修繕費用や管理費用の負担で揉めるケースは少なくありません。
リスク④:他の共有者が持分を売却し、見知らぬ第三者が共有者になる
他の共有者が、自分の持分のみを第三者(専門の買取業者など)に売却してしまう可能性があります。
その結果、ある日突然、見知らぬ業者が新たな共有者として登場します。
新たな共有者は、家賃(持分相当額)の請求や、共有物分割請求訴訟などを求めてくる可能性が高くなります。
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自分の持分のみを売却する際の注意点とデメリット
「持分売却」は有効な手段ですが、以下のような注意点・デメリットも存在します。
- 一般の買い手(個人)を見つけるのは難しい
- 専門の買取業者への売却価格は相場より安くなる傾向がある
- 買取後に他の共有者とトラブルになる可能性がある(家賃請求など)
注意点①:一般の買い手(個人)を見つけるのは難しい
不動産の「持分」だけを購入したいという一般の個人は、ほとんどいません。
持分だけでは不動産を自由に使えず、他の共有者との調整が必要になるためです。
したがって、売却先はほぼ専門の買取業者に限られます。
注意点②:専門の買取業者への売却価格は相場より安くなる傾向がある
専門の買取業者は、他の共有者との交渉や訴訟のリスク・費用を織り込んで買取価格を査定します。
そのため、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた金額よりも、実際の売却価格は安くなる傾向が強いです。
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注意点③:買取後に他の共有者とトラブルになる可能性がある(家賃請求など)
自分の持分を業者に売却した後、残された他の共有者と、新たな共有者(買取業者)との間でトラブルが発生する可能性があります。
例えば、不動産に居住している共有者に対し、買取業者が持分相当分の家賃を請求するケースなどです。
共有名義不動産の売却にかかる費用と必要書類
共有名義不動産(またはご自身の持分)を売却する手続きを進めるにあたり、発生する費用と必要な書類を事前に把握しておきましょう。
売却時に発生する主な費用(税金・仲介手数料など)

共有名義不動産・共有持分の売却に際しては、主に以下のような費用や税金が発生します。
- 仲介手数料:不動産会社に仲介を依頼した場合の成功報酬。
- 印紙税:売買契約書に貼付する印紙代。
- 登記費用:所有権移転登記などを司法書士に依頼する費用。
- 譲渡所得税・住民税:売却によって利益が出た場合に課税されます。
- その他:測量費用(土地の場合)など。
売却手続きに必要な書類一覧

共有名義不動産の売却手続きには、一般的に以下の書類が必要です。
- 登記済権利証または登記識別情報通知
- 実印
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
- 固定資産税評価証明書
- 本人確認書類(運転免許証など)
※不動産全体を売却する場合は共有者全員分、ご自身の持分のみを売却する場合はご自身の分のみご用意ください。
共有名義不動産の売却でよくあるトラブル例と対処法

共有名義不動産の売却でよくあるトラブルは、主に以下の通りです。
- 共有者の一部と連絡が取れない・行方不明
- 売却価格や条件で意見がまとまらない
- 他の共有者が売却にも持分買取にも応じない
- 共有者が認知症などで意思表示ができない
トラブル①:共有者の一部と連絡が取れない・行方不明
戸籍や住民票を辿って調査する必要がありますが、時間と手間がかかります。
専門家(弁護士や司法書士)への依頼も検討しましょう。
それでも行方不明の場合は、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てるなどの法的手続きが必要です。
トラブル②:売却価格や条件で意見がまとまらない
「もっと高く売りたい」などで合意できないケースです。
複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な相場価格を提示して冷静に話し合うことがポイントです。
売却代金の分配方法も事前に明確に決めておきましょう。
トラブル③:他の共有者が売却にも持分買取にも応じない
話し合いでの解決が困難であれば、「自分の持分のみを第三者に売却する」方法、または「共有物分割請求訴訟」を検討することになります。
トラブル④:共有者が認知症などで意思表示ができない
共有者に判断能力がない場合、その人が行った売買契約は無効となります。
この場合、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらう必要があります。
成年後見人が本人に代わって法律行為を行いますが、手続きは複雑化します。
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そもそも不動産が共有名義になるのを防ぐ方法
最も望ましいのは、将来のトラブルの種となる「共有名義」状態を最初から作らないことです。
不動産が共有名義になるのを防ぐ方法としては、以下のようなものがあります。
- 遺産分割協議で安易に共有名義を選択しない
- 共有状態になってしまったら早めに共有物分割を行う
方法①:遺産分割協議で安易に共有名義を選択しない
相続が発生した際、安易に「法定相続分で共有」を選択するのは避けるべきです。
不動産は「誰か一人が相続し、他の相続人には金銭を支払う(代償分割)」か、「売却して現金を分配する(換価分割)」といった方法を検討しましょう。
方法②:共有状態になってしまったら早めに共有物分割を行う
すでに共有名義になっている場合は、関係性が良好なうちに共有状態の解消(共有物分割)について話し合いましょう。
相続が発生して権利関係が複雑化する前に手を打つことが肝心です。
売却が難しい時は「共有持分を担保」にする方法も
「他の共有者とトラブルになりたくない」「すぐに売却するのが難しい」しかし、お金は必要だ、という状況もあるでしょう。
そのような場合、ご自身の「共有持分」を担保にして資金を調達する「共有持分担保ローン」という選択肢があります。
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共有持分は不動産担保ローンの対象になる
一般的に銀行は共有持分のみを担保とする融資に消極的です。
しかし、ノンバンク系の一部の金融機関では、共有持分を専門に評価し、融資対象としている場合があります。
他の共有者の同意なしに、ご自身の持分だけでローンを組むことが可能です。
売却せずに資金を調達するメリット
共有持分担保ローンのメリットは、不動産を手放さずに現金化できる点です。
まずはローンで必要な資金を調達し、その間にじっくりと共有者と話し合いを進める、といった活用もできます。
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共有持分で融資を受ける場合の注意点
共有持分での融資は、不動産全体を担保にするよりも金利が高くなる傾向があります。
また、返済が滞れば持分を失うリスクもあります。
融資条件や返済計画をしっかり確認し、信頼できる金融機関に相談しましょう。
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まとめ
共有名義不動産が「売却できない」と言われるのは、不動産全体を売却するために共有者全員の同意が必要だからです。
しかし、ご自身の持分のみであれば、他の共有者の同意なく売却(または担保提供)が可能です。
売却できない場合の対処法には、他の共有者への買取打診、専門業者への持分売却、共有物分割請求訴訟などがあります。
また、売却を急がず、ひとまず資金が必要な場合は「共有持分担保ローン」の活用も有効な選択肢です。
共有持分は取り扱いが難しく、専門的な知識が求められます。
大手町フィナンシャルでは、共有持分、借地権、再建築不可物件など、他の金融機関で取り扱いが難しい不動産も独自の審査基準で柔軟に評価します。
共有名義不動産の売却や活用でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
秘密厳守で、お客様の状況に最適なプランをご提案いたします。
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共有名義不動産の売却に関してよくある質問

共有名義不動産の売却に関してよくある質問と、その回答をいくつかご紹介します。
Q1.共有者の一人が勝手に不動産を売却してしまったらどうなりますか?
A.不動産全体を勝手に売却することはできません。
もし共有者の一人が不動産全体を勝手に売却・登記した場合、他の共有者はその登記の抹消を請求できます。
ただし、その共有者が「自分の持分のみ」を売却したのであれば、それは合法的な行為です。
Q2.共有者が行方不明の場合、絶対に売却できませんか?
A.法的な手続きを踏めば売却できる可能性があります。
共有者が行方不明の場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てます。
選任された管理人が、行方不明者に代わって売却の協議に参加します(売却には裁判所の許可が必要)。
ただし、時間と手間がかかります。
Q3.持分のみを売却した場合、固定資産税の扱いはどうなりますか?
A.売却後は、持分を購入した新しい所有者が納税義務を負います。
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に課税されます。
年の途中で売却した場合、売却日以降の税額相当額を、新しい所有者(買主)に負担してもらうよう清算するのが一般的です。
Q4.売却に反対する共有者に、無理やり売却させることはできますか?
A.「共有物分割請求訴訟」によって強制的に売却できる可能性があります。
話し合いで合意できない場合、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起します。
裁判所が「換価分割(競売による売却)」を命じれば、実質的に強制的な売却となります。
