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共有物分割請求とは?手順や知っておくべきデメリットを解説

共有物分割請求とは|方法や手順、メリット・デメリットを解説

不動産の権利を複数人で所有している「共有名義不動産」の共有状態は、共有者同士のトラブルにつながる場合があります。

この記事では、共有名義不動産を単独名義に変更したい方に向けて、共有物分割請求の手順や流れ、メリット・デメリットなどを分かりやすくご紹介します。

目次

共有物分割請求とは

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

共有物分割請求を行う目的

単独名義の不動産であれば、売却や賃貸、リフォームや建て替えなどを、誰かの同意を得ることなく自分の判断で自由に行えます。
また、不動産を担保に融資を受ける場合も、共有名義不動産よりも融資のハードルが低くなります。

共有名義不動産の問題点

共有名義不動産には以下のような問題点があります。

不動産が共有名義になるきっかけ

前提として、不動産が共有名義になるきっかけは、相続と不動産の共同購入です。
例えば、以下のようなケースで不動産が共有名義になります。

共有物分割請求の3つのステップ

共有物分割請求は、大きく分けて以下の3ステップで行います。

  1. 共有物分割協議
  2. 共有物分割調停
  3. 共有物分割請求訴訟

共有物分割協議とは、共有者同士での話し合いのことです。
共有名義不動産をどのように分割するかについて、まずは当事者間の協議で解決することを目指します。

協議の結果、共有者全員の合意が得られればこのステップから先には進まず解決の運びとなりますが、一人でも同意しない共有者がいる場合は、次のステップ2またはステップ3に進みます。

ステップ1:共有物分割協議

前提として、まずは当事者どうして不動産の分割方法や活用方針について、協議することが最善策です。それぞれの意向を確認し、妥協点や解決策を探ってみましょう。

また、不動産の分割時に重要になるのが、不動産の評価額です。売買を行う場合、どれくらいの価格になるのか、不動産会社に査定を依頼しておくと、具体的な分割方法について協議が進みやすくなります。

ステップ2:共有物分割調停

当事者間の話し合いだけでは解決できない場合、裁判所の調停委員を間に入れて再度話し合うことができます。

調停委員が共有者ごとの主張を整理したり、アドバイスをくれたりするため、当事者のみの話し合いに比べて結論がまとまりやすい傾向があります。
ただし、調停委員が間に入る以外はステップ1の「協議」と変わらず、あくまでも話し合いに過ぎないため「調停」は必須ではありません。
そのため、このステップを飛ばして次の「訴訟」に進むことを請求することも可能※です。

※「調停」を飛ばす請求が、権利濫用として認められない場合もあります。

ステップ3:共有物分割請求訴訟

「協議」や「調停」といった話し合いで共有者全員の合意が得られない場合は、地方裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立て、共有名義不動産の分け方を裁判官に委ねることで強制的に解決します。

裁判所の判決には法的な拘束力があり、共有者全員は指定された共有名義不動産の分け方に従う必要があります。
裁判所の判決に共有者全員が納得するとは限らず、人間関係が悪化するなどのリスクも考えられるため、「訴訟」は話し合いで解決できない場合の最終手段と考えるのが一般的です。

共有物分割請求訴訟を行うとどうなる?

共有物分割請求訴訟後の結果には、以下の4パターンがあります。

現物分割

現物分割

現物分割とは、主に土地を物理的に分割し、各共有者が一部分を単独所有する判決です。
現物分割が可能か否かは、土地の広さや形状、利用状況などによって判断されます。

現物分割のメリットとして、以下が挙げられます。

代償分割

代償分割には、以下の2種類があります。

  • 全面的価格賠償
  • 一部価格賠償

全面的価格賠償

代償分割:全面的価格賠償

不動産を単独で所有したい共有者と、持分を売却して現金化したい他の所有者の利害が一致する場合に有効です。通常、持分の評価額は不動産鑑定士などの専門家が算出する適正な時価であるため、不公平感が少ない点はメリットといえます。

しかし、共有名義不動産を手放す側は早期に現金化できる一方で、買い取る側の金銭的な負担が大きい点はデメリットといえるでしょう。一括での支払いが難しい場合は、分割払いなどを検討せざるを得ないケースもあります。

一部価格賠償

代償分割:一部価格賠償

例えば、100坪の土地を半分に分けて2人がそれぞれ50坪ずつ取得する場合、土地の面積は同じであるため価値の過不足が生じているようには見えないかもしれません。
しかし、同じ面積の土地であっても、一方が北向きの土地でもう一方が南向きの土地の場合、一般的に南向きのほうが日当たりがよく価値も高い傾向があります。

このようなケースでは、南向きの土地を取得する人が、相対的に価値の低い北向きの土地を取得する人に対して、差額に相当する金額を支払うことが一般的です。

換価分割

換価分割

換価分割を行う際は、まず適正な価格で売却できるように任意売却で買い手を探します。
もし見つけられない場合は、競売による売却も検討されます。

換価分割には、以下のようなリスクがあります。

そのため、現物分割と代償分割のどちらも難しい場合に、最終手段として選択されるケースが多く見られます。
しかし、共有者全員が不動産を手放すことになるため、紛争の長期化を避けられるなどのメリットもあります。

和解

和解

共有物分割請求訴訟においては、現物分割・代償分割・換価分割の判決に加えて、裁判所から「和解」が勧告されることもあります。(民事訴訟法267条

現物分割・代償分割・換価分割の「判決」には、当事者が納得しているかに関わらず必ず従う必要がある一方で、和解の場合は、当事者同士で自由に解決方法を決められる点もメリットです。

例えば、代償分割の判決では一括払いになるところを分割払いにしたり、共有名義不動産を売却する方法を、売却価格が低くなりがちな競売ではなく任意売却にしたりといった、当事者にとってより納得度の高い解決方法を探ることもできます。

共有物分割請求が必要になるケース

共有物分割請求が必要になる代表的なケースは以下の通りです。

共有物分割協議で全員の意見がまとまらない場合

共有物分割協議、つまり話し合いで解決するのが理想的ですが、非協力的な共有者がいたり、お互いの意見・主張が食い違ったりして、うまくまとまらないケースも珍しくありません。

共有物分割協議の結果、一人でも同意しない共有者がいる場合は裁判所の調停委員を間に入れて話し合う「調停」、または裁判所が出す判決に委ねる「訴訟」に進みます。

不動産を占拠している特定の共有者がいる場合

共有名義不動産の場合、各共有者に不動産全体を使用する権利が付与されているため、不動産を占拠している共有者を追い出すことは困難です。

しかし、共有物分割請求訴訟を起こすことで不動産の単独所有を主張できます。
主張が認められれば不動産を占拠する共有者は不法占拠していることになり、不動産の明け渡しを正式に請求できるようになります。

不動産を現金化したいが、反対する共有者がいる場合

共有者全員の同意が得られず、共有名義不動産の売却が難しいケースです。

共有物分割請求訴訟を起こし、換価分割の判決が下されると、競売で共有名義不動産を売却することになります。
判決には必ず従う必要があるため、「訴訟」は他の共有者の意思を問わず、強制的に共有名義不動産を現金化したい場合などに有効な手段といえます。

複数の相続人がおり、不動産を共有名義で相続した場合

親が所有していた不動産を複数の子供が相続するなどのケースです。

被相続人である親が亡くなった直後は、故人への思いや相続税の支払いなどの観点から共有名義で登記したものの、後になってから兄弟間で意見が割れるなどの状況は珍しくありません。
例えば、「実家を建て替えたい」「土地を売却したい」など、相続人それぞれの思惑が異なる場合には共有物分割請求が必要です。

また、相続を繰り返すことで共有者が増加し、時間の経過とともに権利関係が複雑化することも懸念されます。
子供や孫の将来を考えて、早い段階で共有状態を解消するために共有物分割請求を行うこともあります。

離婚により共有状態を解消したい場合

夫婦が共同名義で住宅ローンを組み、マンションを購入したもののその後に離婚したなどのケースです。

このような場合は、共有物分割請求を行うことでマンションの売却代金を分配したり、元夫婦の一方が他方の持分を買い取ることで単独名義に変更したりといった方法で、不動産の共有状態を解消できます。

共有物分割請求訴訟のメリット

共有物分割請求訴訟の代表的なメリットは以下の2つです。

それぞれ解説していきます。

裁判所の判断に委ねられる

共有名義不動産の分割や売却に関する問題を、当事者同士の話し合いで解決することが困難な場合は、裁判所の判断に委ねることができます。

裁判所は、当事者双方の主張や証拠を踏まえたうえで、感情に左右されることなく公平な判断を下してくれます。
そのため、当事者間に力関係の偏りがある場合、特に弱い立場の者にとっては大きな助けとなることがあります。

分割方法の公平性が高い

共有物分割請求訴訟は、分割方法の公平性が高く、各共有者が納得しやすい解決策といえます。

裁判所は、不動産の状況や各人の持分などを総合的に判断して、できるだけ公平な結論を目指します。
例えば、不動産の価値に差がある場合でも、専門家の意見を参考にしながら適正な評価を行い、各共有者の取得部分の価値が均等になるように調整する場合があります。

他の共有者からの同意が不要

共有物分割請求訴訟には法的な強制力があり、1人の共有者が申し立てれば、他の共有者からの同意を得ることなく訴訟は進行します。

共有物分割請求訴訟のデメリット

共有物分割請求訴訟の代表的なデメリットは、以下の4つです。

時間と費用を要する

共有物分割請求訴訟を行う際には、解決するまでに時間と費用がかかることを覚悟する必要があります。

共有者同士での話し合いがスムーズに進み、「協議」や「調停」の段階で解決すれば時間も費用もそれほど要しませんが、「訴訟」までいくと相当な時間と費用を要します。

まず、共有物分割請求訴訟を提起するまでに、必要書類の収集や弁護士との相談に手間と時間がかかります。
訴訟が開始された後も、裁判所の陪審スケジュールに従って約1か月毎に複数回の口頭弁論が実施され、解決までには約6ヶ月〜1年、またはそれ以上の期間を要する場合もあります。

さらに、その間には訴訟費用や弁護士費用を継続的に支払わなければいけません。

共有物分割請求訴訟にかかる時間や費用については、後の章でも詳しく解説しています。

親族間の遺恨を残す場合がある

共有者間で意見の相違があると、円満に解決することが難しくなりがちです。

例えば、持分を売却して現金化したい者、賃貸に出して家賃収入を得たい者、自分が住み続けたい者がいる場合、共有者同士の話し合いだけで解決できるケースは多くないでしょう。
とはいえ、「訴訟」まで発展すると関係性がさらに悪化することも考えられるため、慎重に対応を決める必要があります。

共有名義不動産の共有者たちは、兄弟姉妹や叔父叔母などの親族である場合がほとんどであるため、争いが“記録”として残ることによって、親族ゆえの感情が遺恨を残す結果になることもあります。

思い描いた通りの結果にならない場合がある

共有物分割請求訴訟において、裁判所は判例や法律に基づいた客観的な判断を下すことを目指すため、当事者が思い描いた通りの判決が出ない可能性があります。

例えば、訴訟を提起したAの希望は「全面的価格賠償で他の共有者の持分を買い取り、不動産を単独で所有すること」であっても、各共有者に土地を分割する現物分割の判決が出た場合はそれに従う必要があります。

競売判決が下されると売却代金が低くなることもある

共有物分割請求訴訟で競売判決が下されると、想定していたよりも安価に不動産を手放さざるを得ないことがあります。

競売判決での落札価格は一般的に、相場の売却価格の8割程度と言われています。

共有物分割請求訴訟の流れ

共有物分割請求訴訟の主な流れは、以下の通りです。

①共有者同士で協議を行う

共有物分割請求において、まず初めに目指すべきことは共有者同士の話し合い、つまり「協議」による解決です。

各共有者が希望や条件を出し合い、お互いの歩み寄りによる円満な解決を目指します。
協議の段階で重要なことは、後から「言った・言わない」の記憶の食い違いによる意見の対立を避けるために、話し合いの内容や合意事項を書面化しておくことです。

②弁護士に相談する

協議の結果、共有者同士での合意が得られない場合は弁護士に相談します。

共有物分割請求訴訟には法的な手続きが伴うため、弁護士からのサポートが欠かせません。
弁護士には、法的な観点からのアドバイス※や、訴訟提起に必要な書類の作成などを依頼できます。

※弁護士からのアドバイスで、共有物分割請求訴訟を申し立てる前に、裁判所の調停委員を間に入れた話し合いである「調停」を実施する場合もあります。

③共有物分割請求訴訟の申し立てを行う

弁護士にサポートしてもらいながら、共有物分割請求訴訟を提起するために必要な書類を作成し、共有物の所在地を管轄する地方裁判所に提出します。

訴状には、分割の対象となる共有物の情報や、分割が必要となった原因、希望する分割方法・条件などを記載します。

④呼出状が届く

共有物分割請求訴訟の申し立てが受理された後、各共有者の元には裁判所から送付される「呼び出し状」が届きます。

呼び出し状には、口頭弁論の場所や日時、答弁書を提出する期限などが記載されています。

答弁書とは、訴状に記載されている内容に対する被告の言い分を記載する書類のことで、被告は期限までに答弁書を提出する必要があります。

⑤裁判が開始される

裁判所は、口頭弁論または答弁書で原告・被告の主張を審理します。
また、適切な判決を下すために、専門家による不動産の鑑定評価や現地調査を行うことがあります。

ちなみに共有者同士の合意がなされない・反論があるなどの場合は、口頭弁論が複数回にわたって実施されることもあります。

⑥判決または和解勧告が出る

裁判所は、原告・被告の主張や不動産の状況などを踏まえたうえで、適切と考えられる分割方法を決定し判決を下します。
判決は、前述の通り現物分割・代償分割・換価分割のいずれかとなり、判決に不服がある場合は上級審への控訴も可能です。

ただし、控訴すると解決までの期間がさらに延びる点には注意が必要です。
また、判決が下される前に和解が勧告されるケースも珍しくありません。

共有者同士の歩み寄りにより任意の合意がなされれば、早期に円滑な解決も期待できます。

共有物分割請求訴訟にかかる期間

ただし、例えば共有物分割請求訴訟中に共有者が亡くなり相続が発生するなどの事情で長期化し、解決までに2年以上かかるケースもあります。

共有物分割請求訴訟にかかる費用の相場は、合計50~150万円程度

主に以下の3項目で、それぞれ費用が発生します。

  • 弁護士費用:40~60万円程度
  • 不動産鑑定費用:40~50万円程度
  • 訴訟費用:5万円程度

弁護士費用(40~60万円程度)

専門的な知識を持つ弁護士からサポートを受けることは、希望通りの分割方法を実現するために重要です。

弁護士費用は、弁護士に依頼をした際に支払う「着手金」と、依頼人が裁判後に得た経済的利益の金額に応じて支払う「報奨金」の2種類に分かれています。
着手金と報奨金は、どちらも20~30万円程度になる場合が多く、それらを合わせた40~60万円程度が弁護士費用の相場となります。

不動産鑑定費用(40~50万円程度)

裁判所は、公平な判決を下すために不動産鑑定士による共有物の鑑定を行う場合があります。

鑑定料は、建物のみ・土地のみまたはその両方を鑑定するかどうかで異なり、また、対象となる不動産の評価額によっても異なります。
一般住宅の場合は40~50万円程度が相場と言われています。

訴訟費用(5万円程度)

共有物分割請求訴訟を提起する際には、「印紙代」と「切手代」を支払う必要があります。

印紙代とは裁判所の手数料のことで、裁判の対象となる共有不動産の固定不動産評価額によって変動します。
土地の場合は固定資産評価額の1/6、建物の場合は固定資産評価額の1/3で算出され、そこに持分割合を乗じて計算します。
共有物分割請求訴訟の印紙代は、一般的に3~5万円程度になることが多いと言われています。

切手代は被告が1人の場合は6~8千円、2人以上の場合は、人数が増えるごとに2千円ずつ加算されます。

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