2025年不動産業界の最新動向~市場変化と成長戦略~

2025年不動産業界の最新動向~市場変化と成長戦略~

不動産業界は、経済変動、人口動態の変化、政策の転換など、多様な要因によって常にその姿を変えています。2025年、不動産業界は、団塊の世代の高齢化に伴う相続の増加、空き家問題の深刻化、そしてテクノロジーの進化と消費者のニーズの多様化という、複合的な課題に直面します。

本レポートでは、これらの課題を踏まえ、2025年以降の不動産業界で求められる新たな役割と、不動産会社が持続的な成長を実現するための対応策を、専門家の視点から詳細に分析します。

不動産業界の最新動向

不動産業界は、経済、社会、技術の複雑な変化に直面しており、これらの変化は市場環境、法規制、収益モデル、デジタル化、そして人材という、業界の根幹を揺るがす課題を提起しています。以下に、これらの課題を専門家の視点から詳細に解説します。

金利上昇の影響(住宅ローン)

長期金利の上昇に伴い、固定金利型の住宅ローンは上昇傾向にあります。これは、国債の利回りが上昇している影響を受けています。

特に、10年固定などの固定期間選択型ローンにおいて、金利の上昇が顕著に見られます。

変動金利は、短期金利の影響を受けるため、固定金利ほどの大きな変動は見られていませんが、今後の金融政策によっては上昇する可能性があります。

金利上昇は、住宅ローンの返済負担を増加させ、住宅購入意欲を減退させる可能性があります。

不動産価格の変動(都市部・地方)

都市部では、人口集中や再開発などにより不動産価格が高止まりする一方、地方では人口減少や空き家増加により価格が下落する二極化が進んでいます。

以下は、再開発により地価があがっているエリアの一例です。

東京都渋谷区

渋谷駅周辺では、大規模な再開発プロジェクトが進行中であり、商業施設やオフィスビルの建設が進んでいます。これにより、商業地、住宅地ともに地価が上昇傾向にあります。

特に、渋谷駅周辺の交通利便性の向上や、新たな文化発信拠点としての期待感が、地価を押し上げています。

東京都品川区

品川駅周辺では、リニア中央新幹線の開業を見据えた再開発が進んでいます。

これにより、交通利便性の向上が見込まれ、オフィスビルや商業施設の開発が進み、地価上昇に繋がっています。

福岡県福岡市

博多駅周辺では、九州新幹線の全線開業や駅ビルのリニューアルに伴い、商業地を中心に地価が上昇しています。

又、福岡市全体で行われている天神ビックバンの影響は大きく、商業施設、オフィスビル、共同住宅等の再開発が数多く行われている。

神奈川県川崎市

川崎駅周辺では、複合エンターテインメント施設「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」などの再開発が進み、商業地を中心に地価が上昇しています。

駅周辺の利便性が向上し、居住ニーズも高まっています。

北海道倶知安町

ニセコ地域は、海外資本によるリゾート開発が進んでおり、地価が大幅に上昇しています。特にアジアからの投資が多く、リゾート開発の進展により、観光客の増加や雇用機会の創出が期待されています。

円安・外国人投資家の動向(海外資本の影響)

近年の円安傾向により、海外投資家から見て日本の不動産が割安になっています。

主要都市の不動産価格は、他の先進国と比較して割安であり、高い利回りを期待できます

また、日本では、外国人による不動産取得に対する規制が比較的少なく、所有権も認められています。

円安は、海外投資家にとって日本の不動産を魅力的な投資対象とし、国内不動産市場への海外資本の流入を促進する可能性があります。

この流れに伴い、不動産会社は、海外投資家のニーズを理解し、グローバルな視点での取引に対応できる体制を構築する必要があると言えます。

人口減少と住宅需要の減少

日本の人口減少は、長期的に住宅需要の減少につながり、不動産市場の縮小を招く可能性があります。

不動産会社は、新たな需要を創出するために、高齢者向け住宅、シェアハウス、コンパクトマンションなど、多様なニーズに対応した商品開発を行う必要があります。

以下は、昨今話題となった高齢者向け住宅、シェアハウス、コンパクトマンションの一例です。

高齢者向け住宅:「ヘーベルVillage幡ヶ谷 ~Lush Peak 幡ヶ谷~」

2024年4月に完成した、東京都渋谷区にある「ヘーベルVillage幡ヶ谷 ~Lush Peak 幡ヶ谷~」は、60歳以上のシニアが安心快適に暮らせる、サービスの付いた賃貸住宅です。

ヘーベルVillageは、旭化成が運営するシニア賃貸住宅であり、バリアフリー構造はもとより、コンシェルジュサービス、健康相談サービス、アクティビティ開催、提携医療機関の紹介などの「6つの安心」でシニアの暮らしをサポートする。

都市部での高齢者向け住宅のニーズに応え、快適な居住空間と安心のサービスを提供しています。

高齢者向けシェアハウス:「シニアライフ田無」

東京都西東京市にある「シニアライフ田無」は、高齢者向けのシェアハウスです。

家具・家電付きの個室と、交流を促す共有スペースを備え、高齢者の孤独感解消や健康維持をサポートする。

比較的安価な家賃設定も魅力の一つであり、新たな高齢者の住まい方として注目されています。

コンパクトマンション:「オープンレジデンシア」シリーズ

オープンハウスグループが展開する「オープンレジデンシア」シリーズは、都市部を中心に展開しているコンパクトマンションです。

コンパクトマンションとは、一般的に、単身者やDINKS(共働きで子供のいない夫婦)など、少人数の世帯を主なターゲットとした、専有面積が比較的狭いマンションのことを指します。

コンパクトながらも快適な居住空間と、都市生活の利便性を両立させています。

不動産を取り巻く法改正への対応

不動産業界は、法改正や規制強化によって、事業運営のあり方が大きく変革を迫られています。これらの変化は、不動産会社にとって新たなリスクと機会をもたらし、専門的な知識と戦略的な対応が不可欠となります。以下に、各課題を法律の専門家の視点から解説します。

1. 相続登記義務化(2024年施行)への対応

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続人は相続開始を知った日から3年以内に登記申請を行うことが義務化されました。違反した場合、過料が科される可能性があります。

不動産会社は、顧客に対して、相続登記の重要性と手続きを丁寧に説明し、適切なアドバイスを提供することが求められます。

相続手続きに関する専門家(司法書士、弁護士など)と連携し、顧客の負担軽減と円滑な手続きを支援することが重要です。

2. 民泊・賃貸管理の規制強化

民泊については、住宅宿泊事業法や各自治体の条例により、許可制度、営業日数制限、近隣住民への配慮などが義務付けられています。

賃貸管理については、賃貸住宅管理業法の施行により、登録制度、契約内容の説明義務、管理業務の適正化などが求められています。

不動産会社は、法規制を遵守し、適正な民泊運営や賃貸管理を行うための体制を構築する必要があります。

顧客に対して、法規制に関する正確な情報を提供し、契約内容や管理業務について透明性を確保することが重要です。

3. 環境規制(ZEH・ESG投資)の強化

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及や、ESG投資の推進など、環境配慮型の不動産開発が求められています。

建築物の省エネ性能表示制度や、ESG情報開示に関するガイドラインなどが整備されつつあります。

建築物の省エネ性能表示制度は、2024年4月から開始された制度で、住宅や建築物の省エネルギー性能を分かりやすく表示することで、消費者等が省エネ性能を把握し、比較検討できるようにすることを目的としています。

建築物の販売・賃貸を行う事業者は、省エネ性能を表示することが努力義務となりました。

ESG情報開示に関するガイドラインは、企業が環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する情報を投資家やその他のステークホルダーに対して開示する際の基準や枠組みのことです。

これらのガイドラインは、企業が持続可能な成長を目指し、投資家がESG要素を考慮した投資判断を行うための重要なツールとなっています。

4. 空き家対策と行政の対応

空き家対策特別措置法により、特定空き家に指定された場合、所有者に除却、修繕、立木竹の伐採等の措置命令が出される場合があります。

自治体によっては、空き家活用に関する補助金や助成金制度が設けられています。

空き家所有者に対して、空き家対策に関する情報提供や相談対応を行い、適切な活用方法を提案することが求められます。

自治体と連携し、空き家マッチングや利活用促進など、地域に根差した空き家対策に取り組むことが重要です。

収益モデルの変化と事業リスク

住宅販売市場の滞留と仲介手数料の低下

住宅販売市場の停滞は、不動産仲介業者の収益源である仲介手数料の低下につながる可能性があります。

不動産会社は、新たな収益源を確保するために、不動産管理、リフォーム、コンサルティングなど、多角的な事業展開を行う必要があります。

サブリース問題(家賃保証トラブル)の影響

サブリース契約に関するトラブルは、不動産投資家の収益性を悪化させ、不動産市場の信頼性を損なう可能性があります。

サブリース契約とは、オーナーが所有する賃貸物件をサブリース会社が借り上げ、入居者への転貸(サブリース)を行う契約です。サブリース会社は、オーナーに対して一定の家賃を保証し、空室リスクを負います。

一定メリットがあるように見えるサブリース契約ですが、

  • 当初の契約では高額な家賃保証がされていたが、数年後に大幅に減額された。
  • オーナーが契約を解除しようとしたところ、高額な違約金を請求された。
  • サブリース会社が倒産し、家賃保証が打ち切られた。

などのトラブルが発生しています。

不動産会社は、サブリース契約のリスクを十分に説明し、透明性の高い契約を締結する必要があります。

シェアオフィス・物流施設の需要拡大

働き方の多様化やEC市場の拡大により、シェアオフィスや物流施設の需要が拡大しています。

特に、自動倉庫、搬送ロボット、AIを活用した在庫管理システムなどを導入した先進的物流施設の需要が高まっています。

この背景には、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が開始されたことがあります。この規制強化により、輸送能力の低下やコスト増加が懸念されており、物流効率化の必要性が高まっています。

不動産会社は、これらの新たな需要に対応した物件開発や、管理運営ノウハウを蓄積する必要があります。

DX(デジタル化)の時代と競争力

不動産業界は、IT活用が遅れている分野が多く、契約、管理、集客などの業務効率化が課題となっています。

不動産取引は、取引額が大きいことから、対面でのコミュニケーションや紙媒体での契約が重視される傾向が強く、デジタル化への抵抗感が根強い側面があります。

また、不動産取引に関する法規制や業界慣習は複雑であり、デジタル化を進める上での制約が多いこともIT化が遅れている要因と言えます。

不動産会社では、以下のようなツールを活用し、デジタル化による業務効率の改善に対応していく必要があります。

  • 顧客管理システム(CRM)
    顧客情報の一元管理、顧客とのコミュニケーション履歴の記録、顧客属性に基づいた物件提案など
  • 物件情報管理システム
    物件情報の一元管理、物件情報の自動入力・更新、物件情報の多媒体配信など
  • 電子契約システム
    不動産売買契約、賃貸借契約、重要事項説明などの電子化
  • オンライン内見システム(VR内見)
    VR技術を活用した物件の内見により、内見の手間削減、遠隔地の顧客への対応、顧客体験向上に貢献できる。
  • AI査定ツール
    AIを活用した不動産価格の査定を実現
  • WEB接客ツール
    ホームページやWEB上の不動産ポータルサイトにチャットボットやビデオ接客などのWEB接客ツールを埋め込み、集客や販売促進につなげます。

人手不足と人材確保の課題

不動産業界は、宅建士や管理業務主任者などの専門人材が不足しており、業務遂行に支障をきたす可能性があります。

また、法改正や規制強化、顧客ニーズの多様化などにより、不動産取引や管理業務が複雑化していることから、専門知識を持つ人材の採用と育成が不動産業界の課題となっています。

不動産会社は、資格取得支援制度や、働きやすい環境整備など、人材確保のための取り組みを行う必要があります。

まとめ・不動産業界の今後の展望

2025年以降の不動産業界は、市場環境の変化、法規制、デジタル化、人材不足など、多岐にわたる課題に直面する一方で、新たな成長分野も広がります。

成長分野としては、高齢化社会に対応した高齢者向け住宅、多様な働き方に対応するシェアオフィス、EC市場拡大を背景とした物流施設などが挙げられます。

また、AIやIoTなどのテクノロジーを活用した不動産テック分野も、業務効率化や顧客体験向上に貢献する重要な成長分野です。

不動産会社は、これらの変化に対応するため、以下の取り組みが求められます。

  1. DX推進:
    ITツールを積極的に導入し、業務効率化、顧客体験向上、新たなサービス提供を実現する。
  2. 人材育成
    資格取得支援制度や働きやすい環境整備を通じて、専門人材の確保と育成に注力する。
  3. 法規制対応
    相続登記義務化、民泊・賃貸管理の規制強化、環境規制など、法改正への対応を徹底する。
  4. 新たな需要への対応
    高齢者向け住宅、シェアオフィス、物流施設など、多様なニーズに対応した商品開発やサービス提供を行う。

これらの取り組みの中で、独自性や競合優位性を見出すことが、今後の不動産業界で持続的な成長を実現することに繋がると言えます。

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